先回の絞り型シガートレーの続きです。
絞り型で製品を作るとなると、刃型の高さが足りないのが難点で、これだけは外注しないと何ともならないと思っていたのですが、一工夫すれば私が持っている19mm高の刃材で高さがクリアー出来るのではないか?ということに気がつきました。
つまり19mmの刃型で引っかかるのは補強桟の部分で、これを外に持ってきてしまうと19mm丸々使えるわけです。言っていることがよくわからないと思いますので、下の写真をご参照あれ。
角が丸い長方形部分が刃で、本来なら長方形部分の内側に補強桟をつけるのですが、外側に補強を囲ってつけているという格好です。
従いまして、今回刃型は外注する必要なしということで、昼休みにちょいと刃型を曲げて、製品が完成いたしました。
ここで一番重要なのは、
構想、設計(CAD引き・3Dモデリング)、木型切削、刃型製作、革絞り、縫製、 というすべてが内製でできた製品ということです。すなわち当店ですべて完結しております。
革にする牛はどうした?まさか自分で飼っているんじゃないだろうな?とかそういう事は言わないで欲しいのですが、ついにやっとここまで到達しました。
第1号は、ライトキャメルのシガートレー。
どうです?なかなか美しいざんすねぇ。ライティングが悪くて少々不健康な色に写っておりますが、実際はもっと綺麗な色です。
ただ、ちょっぴり残念なのが、この革ではあまり革製品に見えないというところです。
革の立体成型もここまでやると、革製品のイメージから外れてしまいかねない、という難しいところです。
さて続きまして、上のバージョンを一回り大きくしてフォルムに余裕を持たせて風格を出したシガートレー。名付けて「グランデ」
絞りはさらに深くしてあり、ウォールの高さは設計値で15mm。
凹型のモデリング。割と単純なモデリングです。「割と単純」じゃないと革絞りが成り立たないわけですが。ライノが使える人なら、この画像だけでだいたいどうやってモデリングしているか手順がわかると思います。
ブロック端近くにある細い山の線がミシンのステッチガイドラインです。これが革にガイド線のネンを入れてくれます。
要するに「実に芸が細かい」と言って欲しいわけです。
どっち方向に入れても良いように、両端は円形になっております。その方が絞りやすいという理由でもあります。
この美しい円形絞りをとくと見てほしいです。
シガーチューボが半分以上埋まるという、これまで見たこともない深絞りです。
深絞り自体は多少存在しますが、絞り返してウォールになっているものは、私は見たことがありません。
そして美しい腰のくびれ。
信じられますか?元は一枚革ですよ。作っている私が、未だに半信半疑です。
去年の7月に金が余っているから何か買おうかと、ふと思いついてローランドのMDX40を購入して、買ったは良いけど置き場所がないから、親父とDIYで工房を建て増しして、MDXをやっと設置したは良いけど、実は3次元が使えないからライノを自習してと、すったもんだで1年経過。ようやくここまで出来るようになりました。
ブログでは、何でも案外すんなり行っているように見えるかもしれませんが、結構失敗しておりますよ。上手くいった結果ぐらいしか書かないんです。それは格好をつけたいからではなく、一つ一つの失敗こそがノウハウの蓄積そのものだからです。