2010年5月13日木曜日

手縫い用糸のロウ引き

早朝から深夜まで延々とケース作りが続いております。
私の役目は側面と底の手縫いですが、淡々とやっております。こんなに真剣に仕事をしたのは、人生初めてなのではないだろうかというぐらいです(実に甘い人生ですな)。


本日手縫いした分だけで上の状態。一体全部でどれだけあるのでしょうか。全部作ったらすべてを並べて記念写真を撮っておきたいところですが、並べるスペースがありません。

革の手縫いは縫製途中に糸が緩まないように糸に滑り止めのロウを引いて縫製をするのですが、ロウを引いたら滑るのではないか?と当然の疑問があるかと思いますが、ロウと言っても松ヤニが混ぜてあるものです。
このロウ引きという作業に案外時間を取られてしまっていることに、本日気がつきました。1回あたり3分ぐらいです。たった3分というなかれ、100個作ったら300分:つまり5時間。ロウ引きという作業は大変重要な作業なのですが、100個で5時間は完全な時間の浪費としか言いようがありません。

そこで本日、このロウ引き作業を一気に済ませてしまおうということで、やってみました。
100円ショップで売っている雪平鍋に、養蜂業者さんから買ってきた蜜蝋を入れて、コンロにかけて液状に溶解。その中に糸を通しながら、片方では電動ドリルの先に紙管をくっつけて、ロウが染みこんだ糸を延々と巻き取っていくという、こうやって書いてしまえば至って単純な方法。糸が絡まないようにしながらとか、糸に付きすぎたロウをこそぎ落としながら糸を巻き取るには、多少の工夫と、人間二人がかりでないと難しいです。


結果は上の写真の通りで、1時間弱の作業時間で全部で500メーターはロウ付けしたと思います。
熱して液状のロウに糸を通しているので、ロウが糸の表面だけではなく中まできちんと浸透していてほぼ理想的なロウ引き状態です。糸がシャキッとしているので縫製途中に糸が絡まったりせず、手縫い時間もわずかですが短縮できて、縫い上がりも美しい、という良いこと尽くめの素晴らしい結果となったのでした。