2026年3月18日水曜日

AIと激闘せざるをえない時代

AIと激闘せざるをえない時代

世の中は猫も杓子もAI、AIと騒がしい昨今です。どこを見ても「AIで爆速」「AIで人生激変」「AIで簡単に副業」みたいな話ばかりで、正直なところ、店主のような辺境の人間からすると、少々眩しすぎて目が痛いです。なんか昔の少年漫画雑誌の広告みたいだね。

「AIのおかげで彼女ができました」

「AIのおかげで宝くじに当たりました」

「AIのおかげで志望校に入学できました」

「AIのおかげでグレていた息子が更生しました」

嘘つけ。とにかく何だか胡散臭いんだよ。

とはいえ、「AIなんぞ知らん」とゴネていても、こちらの生活がちっとも楽にならないのもまた事実。そこでわたくしも、せめて足を引きずりながらでも、このAIという新興宗教じみた世界に馴染んでおかねばならぬだろうな、と思うようになりまして、あれこれ触ってみているわけです。

まずは足元の雑用からです。日々の事務処理で、どうでもいい文字列をどうでもよく打ち込むだけの作業というのは、人類の尊厳を確実に削ってくるものでして、それを少しでも減らすべく、Antigravityにいろいろ作ってもらいました。おかげさまで、事務処理に関しては、以前よりはだいぶマシな人生になってきたのであります。

弥生会計という修行マシンとの闘い

ところが、どうにも避けて通れない強敵というのがいまして、それが弥生会計という経理ソフトです。これはですね、わたくしが今まで触ってきたソフトウェアの中でも、文句なしに最下位争いに食い込むレベルでUIが酷い。もはや「会計ソフト」というよりは、「人間の根気を試す修行装置」と呼ぶべき代物なのです。

チマチマ、チマチマと入力させられる。しかもそのUIが、なぜそうなっているのか、作った本人も覚えていないのではないだろうか、という迷宮構造。あれを真面目に毎日使っていたら、3年後には人間の魂が抜け殻になっているだろうと確信するレベルなのですよ。

頼むから、グワーっと一気に処理させてくれよ!ひとマス入力して、次のマス入力、これを延々繰り返すって正気じゃねえよ、俺に精神を病ませる気か、なあ答えてくれよ?

そこで私は考えたのでした。「こんなもの、正面から相手をしていたらこちらの負けだ」と。

具体的には、

  • 銀行口座の出入金データをまるごとぶっこ抜いてくる
  • そのデータをAIに弥生形式に自動変換させる
  • ついでにインボイス番号もAIに探させる
  • あとは弥生に怒涛のごとく一気にインポートして、ちまちま入力を極力ゼロにする

という、一連の流れを自動化するツールを、AIに書かせたのであります。

このツールがですね、正直に申しまして、弥生の年間サポート契約についてくる「自動入力」だか何だかいうデータをグチャグチャにしてしまうカスみたいな機能よりも、遥かに高精度であります(検算機能をつけている)。自分で自分を褒めるのはあまり好きではありませんが、これはもう今日という今日はとうとう弥生会計に正義の鉄槌を下してやったと言って差し支えないと思うのです。

一介の素人がAIにチョコチョコと頼みながら作ったツールが、弥生会計の開発陣が作って月額5000円サブスクさせている自動入力よりも優れたものができてしまっているんだからさ、時代を感じるよ。

こうなってくると、もはや「AIでできることを、人力でチマチマやる」という行為そのものが、罰ゲームに見えてきます。世の中の隅っこで生きている店主ですらそう感じるわけですから、時代は相当進んでしまったのでしょう。

Google AI Pro に一年分先払いしてしまった話

そんなこんなでAIとの闘い(という名の共存)を続けていたところ、Antigravityの無料枠だけではクオータが足りなくなってきました。そこで店主は一念発起しまして、Google AI Pro を一年分、一括前払いしたのであります。

ところがですね、しばらくしてから、例によって前触れもなくルール改悪が発動したのであります。気がつけば、実質的にGemini 3 Flash しか使えない仕様になっている。「Google先生、やっちゃってくれましたね!(やりやがったなこの野郎)」という感じです。

もちろん「返金しろ!」と叫びたくなる気持ちは山々ですが、相手は国際的大企業Googleです。ここで無理に返金させようと躍起になれば、「好ましくない顧客」扱いをされ、将来的に妙な不便を押し付けられるのではないか、という疑心暗鬼が頭をよぎるのであります。

それもこれも、Googleがすでに我々の人生の奥深くにまで入り込んでしまっているからです。

  • YouTube
  • Google フォト
  • このブログを載せている Blogger
  • Gmail
  • Google マップ
  • AI Studio
  • Google ドライブ などなど

こうして並べてみると、Google アカウントをBANされた瞬間に、店主の人生はその日から成り立たなくなる、と言っても過言ではないのです。そこまで侵食されてしまっている以上、ここで一年分の前払い料金を血眼になって取り返しに行くのは、長期的に見て賢い選択ではないだろうと判断したわけです。

反省して、Cursor は月払いにしたのであります

しかしながら、Gemini 3 Flash だけでは話にならない。ちょっと込み入ったことをしようとした瞬間に、あちらこちらが物足りなくなる。そういうわけで、レイアウトや操作感がAntigravityに似ているCursorというツールに目を付けまして、こちらに課金することにしたのです。

ただし今度はGoogle AI Pro の反省を活かしまして、一年分の一括払いはしない。AIを取り巻く状況は、私が考える速度よりも遙かに速く変化していきますから、月払い一択が賢明であろうと判断したわけです。

で、Cursorを使い始めるとどうなるかと言うと、今度は逆にAntigravity 側の Gemini 3 Flash のクオータが余ってくるのですね。人間というのは本当に上手くいかないもので、「足りない」と思って増やすと、今度は「余る」のです。困ったもんです。

しかし前払いで手に入れたクオータを、ただ放置して蒸発させるのは、さすがに自称・倹約家(締まり屋)としては我慢がならない。そこでまたしてもAIに相談することにしたのです。

「余ったクオータで金にならないか?」という、さもしい発想

まず店主がAIに投げかけた相談は、実にさもしいものでありました。

「この余ってるクオータで、何か金になりそうなことを考えてくれないか?」

世の中のAIインフルエンサーの皆様は、「AIなら簡単に金が稼げます!」と、さも呼吸をするかのように軽々しくおっしゃるのでありますが、実際にやってみると分かる通り、そんな簡単なもんじゃないのです。

AIを使うだけなら確かに簡単です。しかし、AIを使ってお金を生み出すとなると、これはもう完全に別の次元の話であり、あっちこっちに地雷が埋まっているフィールドを裸足で走らされるようなもんなのです。

というかですね、AIインフルエンサーの方々自身を見ていても、「そんなに爆発的に稼げているようには見えない」のが、正直なところだよね。だってチマチマと動画作ってるだろ?もっとガツンと稼げるなら動画なんて面倒くさいものなんかいちいち作らないよ。YouTube で爽やかに笑っている裏側では、きっとAdSenseの数字を見て白目を剥いておられるに違いないな(ゴメンね)。

AIと壁打ちしたら、「旧唐書」に行き着いたのであります

そんなこんなでAIと壁打ちを繰り返した結果、出てきた案がこちら。

「中国の文献の原文を、日本語訳してみたらどうか?」

考えてみれば、中国の正史やら古典やらは山ほどあるのですが、

  • 全文がちゃんと訳されていて
  • なおかつ現代日本語で読みやすく
  • しかもネットで簡単に読める

という条件を満たすものは、実はそう多くないのす。

あれこれ物色した結果、白羽の矢が立ったのが『旧唐書』です。調べてみると、これがちょっとググった程度では全文和訳がWeb上で見つからない。だったらここを攻めるしかあるまい、と。なんとなく社会的な意義があるような気がする、というのも重要なポイントでありました。

そこで、原文約200巻分をまるっとぶっこ抜いてきて、余りクオータを抱えたGemini 3 Flashに和訳をさせてみたのです。

するとこれが、たいへんに仕事が早い。サクサクと処理が進み、「おお、これは思ったよりいけるのではないか」と一瞬だけ期待したわけでありますが、そこで油断した店主が悪かった。

出てきた翻訳を見てみると、原文が700行ぐらいあるのに、和訳が120行ぐらいしかない。どう見てもおかしい。

これは翻訳ではない。「節子、これは翻訳やなくて要約や……」という、あの有名なセリフが脳内で再生されたのでありました。

要約するな、全部訳せ:プロンプトとの闘い

ここで分かったのは、Gemini 3 Flash に精緻な翻訳をさせるのは、プロンプト設計が地獄である、という厳しい現実でした。

何を言っても要約してサボる。こちらが「できるだけ詳しく」とお願いすれば、「はい喜んで!」とばかりに、見るからに要約な文章を出してくるのです。AIというのは、本当に楽をする方向に関しては天才的なのです。AIはサボる機能まで会得しているのか!と感心しました。

そこで、

  • 「要約するな」
  • 「一字一句、絶対に全部訳せ」
  • 「原文より短い和訳をしたら、即やり直しさせるぞ!」

などという、ほとんど脅迫状のようなプロンプトを、AIと一緒に頭を抱えながら組み立てる修行が始まったのです。

そうして何度も往復しながら、ようやく「一言一句どうにかこうにか全部訳させる」ためのプロンプトが形になってきました。現在は、Antigravityのクオータをブン回しながら、Gemini3 Flashは阿鼻叫喚の旧唐書精緻翻訳マラソンを続けている最中であります。

その産物の一部が、例えばこんな感じです。

唐王朝の偉大なる創業者、高祖神堯大聖大光孝皇帝。その諱(本名)を淵(えん)という。李氏はもともと隴西(ろうせい)狄道(現在の甘粛省)を本貫とする名門であり、その系譜を遡れば、五胡十六国時代に西涼を建国した武昭王・李暠(りこう)に辿り着く。李暠から数えて七代目の孫にあたるのが李淵である。……(以下略)

自分で言うのも何ですが、なかなか読みやすい文章になっています。ただ問題は、店主が歴史ガチ勢ではないので、これを200巻分、真正面から全部読むだけの根気があるのか、と問われると、非常に怪しい、といわざるを得ません。

歴史エンジョイ勢向け「旧唐書 教材解説シリーズ」

そこでまたAIのところに戻りまして、こんな相談をしたのです。

「歴史エンジョイ勢が、苦行にならない程度の負荷で旧唐書に触れられるような解説をさせるプロンプトを作ってくれ」

つまり、

  • ガチ学術論文までは要らない
  • かといって、単なるあらすじではつまらない
  • 現代日本語で、柔らかく、でもちゃんと内容は分かる

という、身の程をわきまえた中途半端ゾーンを狙うプロジェクトです。中途半端と言いましたが、店主の人生そのものがいい加減で中途半端な人ですから、その意味では実にマッチした企画と言えるでしょう。

その結果できあがったプロンプトを使って、翻訳済みの文章を「現代の一般人でも噛まずに飲み込めるレベル」にまで柔らかく解説させ、それをこのブログの「旧唐書 教材解説シリーズ」として載せていく予定です。

旧唐書のような漢文の史書は、受験勉強の黒歴史としてしか記憶に残っていない方も多いと思いますが、実は現代日本語でちゃんと解説されると、かなり面白くて読み応えのあるコンテンツなのです。ホントですよ?

いや、本当に面白いんだって、ちょっと読んでみてよ。旧唐書 教材解説シリーズ  

権力闘争はドロドロ、人間関係はねっとり、皇帝もやたらとポンコツな行動をとったりする。ドラマとして眺めるだけでも相当楽しめるはずであります。

「NotebookLMでよくない?」と言わないのが大人なのです

ここまで読んでくださった奇特な方の中には、

「いや、それ NotebookLM でやればよくない?」

と、心の中で突っ込んだ方もおられるだろうと思います。しかし、それをわざわざ口に出さないのが大人のたしなみというものです。

なぜなら、NotebookLM はですね、まず全文翻訳をしてくれないのです。そしてもうひとつ重要な問題として、店主の場合、

「NotebookLM で一生懸命まとめても、ほぼ見返さない」

という致命的な性癖があるのです。作るだけ作って自己満足し、そのままデータの墓場に放り込んでしまう。これはもう、人生全般にわたって繰り返してきた悪癖でありまして、AIツールひとつで治るような生易しいものではないのです。

それならいっそ、

  • 自分でプロンプトを工夫し
  • 自分で翻訳と解説の流れを構築し
  • その成果をブログとして公開してしまう

という形にしてしまったほうが、少なくとも自分で見返す気にはなるし、ついでにどこかの物好きな方の目にも触れるかもしれない。そういうわけで、わざわざ面倒くさい経路を選んでいるのであります。

おわりに:不完全な人間が、不完全なAIと激闘するのです

AIがこれだけ騒がれる時代になっても、何ひとつとして「完全に丸投げして寝ていればカネが湧いてくる」ような話にはなっておりません。むしろ現実は、

  • 人間がやらなくて済むところを見極め
  • そこにAIをねじ込み
  • サボろうとするAIをプロンプトで締め上げ

という、「てめえが楽をするために全力で工夫する修行」になりつつあるのです。

弥生会計との不毛な戦いを避けるためにツールを作り、Googleの仕様変更に翻弄され、余ったクオータを抱えて『旧唐書』と激闘している店主のように、不完全な人間が、不完全なAIと組んで、不完全な世界の中でどうにかこうにか先へ進んでいく。そのプロセス自体が、もはやひとつのストーリーなのです。

「旧唐書 教材解説シリーズ」が、歴史ガチ勢ではないけれど、何となく唐代の空気を味わってみたい、というエンジョイ勢の方々にとって、ちょうどいい入口になれば幸いであります。店主自身も、AIに引きずられながら、ゆるゆると唐の時代を漂っていこうと思うのでありました。