2026年4月22日水曜日

クリック及び「Alt + Tab」ウィンドウ地獄からの解放

AIエージェントという福音

普通の方はあまり縁がない話かもしれませんが、インターネットを使っていて、商売をやっていると様々な入力欄に延々と「お名前」「郵便番号」「住所」「emailアドレス」というものを一つ一つ入力しないといけない場面というものがでてきます、しかも毎日何度も。

例えば日本郵便のクリックポスト。「クリックポスト」という名前のとおり、発送票を印刷するまで延々とクリックさせられるという、なかなか殺意が芽生える代物であります。それはさておき、クリックポストの入力ですと4つの入力欄で済む話ではあるのですが、実際の作業がどれだけ人の気力を削ぐものかを文字にしてみましょう。

  1. お客様の郵便番号をコピーするために別のウィンドウに切り替える(Alt + Tab)
  2. 郵便番号をマウスで選択して、コピー(Ctrl + C)
  3. クリックポストのウィンドウに切り替える(Alt + Tab)
  4. 郵便番号の欄にカーソルを当てて、ペースト(Ctrl + V)
  5. お客様の住所をコピーするために別のウィンドウに切り替える(Alt + Tab)
  6. 住所をマウスで選択して、コピー(Ctrl + C)
  7. クリックポストのウィンドウに切り替える(Alt + Tab)
  8. 住所の欄にカーソルを当てて、ペースト(Ctrl + V)
  9. お客様の名前をコピーするために別のウィンドウに切り替える(Alt + Tab)
  10. お名前をマウスで選択して、コピー(Ctrl + C)
  11. クリックポストのウィンドウに切り替える(Alt + Tab)
  12. 名前の欄にカーソルを当てて、ペースト(Ctrl + V)
  13. 内容品をキーボードで打つ
  14. 「次へ」のボタンをクリック

14工程。たかが宛名ひとつ入力するのに14工程であります。これを文字にすると、日常的にどれだけの苦行を強いられているかが視覚化されるという話です。しかもこれが多い日で10件。Alt + Tabを往復しているうちに、自分がいま何の作業をしているのか、そもそも自分は誰なのか、存在そのものが怪しくなってくるような精神負担を想像していただけるだろうだと思います。「Tabキーで入力欄を移動したほうが楽ですよ?」と言いたいあなた、そんなつまらない解決をしたいわけではないのです。


国際郵便という更なる絶望の淵

これだけならまだ良い。まだ耐えられる。


国際郵便マイページというものがありまして、こちらはお届け先情報の入力欄が選択欄を含めて13個もある。全部使うわけではないですが、7箇所入力+国名選択。クリックポストと比べると1.5倍の作業量です。単純計算で先ほどの14工程が約21工程に膨れ上がるという、もはや事務作業というより罰則に近い何かなのであります。

これが多い時だと20回ぐらいやる必要があります。20回も繰り返すと軽く1時間はかかり、仕事前の段階でもう精神がかなり削られた状態になって、本業への影響が無視できなくなる。うちの仕事のメインはあくまで作業であり、入力ではないのです。それなのに毎朝この事務負担という名の地獄が待ち構えている。朝から始まる苦行のおかげで、まるで徹夜明けに会議室に放り込まれたような疲労感を携えて本業に取りかかるという、まったく生産的でない毎日を過ごしていたという次第です。

実はもう一つ入力地獄があるのですが、書くのも嫌になってきたのでここでは割愛します。書いているだけで当時のストレスが蘇ってくるものがある。

これをなんとかしたい。切実な願いです。この作業さえなければずいぶんと楽になるのだがなぁ、と毎朝思っていたわけです。Chromeブラウザの拡張機能でこういうものを一気に入力してくれるツールは無いのだろうか? と探しても無い。みんな困っていないのでしょうか? あるいはみんな黙って耐えているのでしょうか? 拡張機能のスクリプトを一から覚えるなんて面倒な事もしたくありません。わたくしが書けるスクリプトは秀丸エディタのマクロが少々ぐらいのものでして、JavaScriptなんて呪文の類にしか見えない人間なのです。


AIエージェントという福音

そんなとき、AIエージェントとか、AIエディタという福音が現れました。

「こういう物を作りたい」という日本語の指示を出すと、ものすごい勢いでスクリプトを書きはじめる。呪文にしか見えなかったJavaScriptが画面上をどんどん埋めていく光景は、まるで自分専属の凄腕プログラマーが横にいて「あぁ、そういうことですね。わっかりやしたー、ちょっと待っててねー」と調子よくキーボードを叩き始めたかのような錯覚を覚えます。30分とか1時間ぐらい、AIから指示される事を試行錯誤しながらデバッグを繰り返すと、Chrome拡張機能のコードが出来上がってしまった。

名付けてクリックポスト・ヘルパー。名前、住所、郵便番号などが入った文章を入れると、勝手に文章の中から必要な情報を選り分けて各入力欄に一気に入力をしてくれるという代物です。名前、住所、郵便番号は特定のフォーマットに沿っていなくても構わない。それらの情報が入っているページを丸ごとコピーしてきて(Ctrl + A)、ウインドウを切り替え(Alt +Tab)クリックポストヘルパーの入力欄にペースト(Ctrl + V)、そしてボタンをクリック。それだけ。

革命的に楽になりました。あの忌々しい「Alt + Tab」でウィンドウを行ったり来たりする作業が消滅したのであります。14工程が4工程になった。しかもどの欄をコピーするとか面倒な事を何も考えなくて良い。とりあえず全部コピーして全部ペーストそしてクリック(もしくはEnterキーを叩く)、後はスクリプトがやってくれる。これは革命だ。


更なる怒涛の一撃

こっちは更にすごい。名付けて国際郵便入力ヘルパー

同じく、名前、住所、郵便番号などが入ったページを丸ごとコピーしてきて、拡張機能の入力欄にペーストして「解析」ボタンを押すと、Google Maps APIを叩いて住所を解析し、住所や郵便番号が正しいかどうかまで検証して、入力欄に一括で入力してくれるという、もはや自分専属の事務員を雇ったも同然の働きをする拡張機能であります。

なぜ住所の解析が必要かと言うと、外国のお客様というのは日本人のようにきちんと住所を書いてくれないのです。Street Addressと郵便番号だけ入力して、国名さえ書かない人が結構おられる。特にアメリカ人はアメリカが唯一の世界と思っているようだ。州名、地域名を正確に書いてほしいとお願いしても、聞いてくれない。果たしてこれで郵便が届くとか思っているのだろうか?その感覚がよくわかりません。郵便番号が間違っているということもちょくちょくある。今の国際郵便というのは、ちょっとでも住所が間違っていると容赦なく差し戻してくるという、なかなか厳しい時代になっておりまして、差し戻しが来るたびに再発送という二度手間三度手間が発生するわけです。

しかしこのヘルパーのおかげで差し戻しがほぼゼロまで減りました。Google Maps APIが「この郵便番号か住所はおかしいぞ」と教えてくれて更に訂正までやってくれるので、発送前に間違いを潰せるという話です。これだけでどれだけの時間と精神と送料が救われたことか。

当然、毎朝の精神を削る苦行と、余計な時間は大幅に短縮されました。


悪知恵という名の処世術

これだけではない。Gemini APIを呼んで英語のメールを書く秀丸メールのマクロまでAIに作ってもらったので、脳汁を絞りながら英語を書く精神的な負担もほぼなくなりました。今どきのAIは秀丸メールのマクロまで私が書くよりもきちんと書いてくれます。驚きですね。1年前のAIは秀丸マクロを書かせるとC言語と間違えたようなコードを出してきたのに、今は進化していました。

ただそのままの設定だと、わたくしが頭を捻って書く英語よりもずっときれいな英語を書いてくれるのですが、あまりにきれいな英語というのも、それはそれで妙な違和感を生むものでして。ネイティブかと見紛うような流暢な英語が日本の個人商店から飛んできたら、相手だって「おや?AIに書かせたか?」と思うでしょう。

そこで、AIへの指示はこうしました。

「英語が苦手そうな日本人の担当者が
頑張って書いている、
誠実さがにじみ出るような英語を書く」

この方が色々と都合が良いのです。完璧すぎない英語は「極東アジア人のしがない個人商店主が一生懸命やってくれている」という好印象を与える。クレーム対応のときも、ネイティブ級の英語で理路整然と反論するより、ちょっと拙い英語で誠意を見せた方が、相手の矛先が鈍る場合があるものです。あなたも海外通販で中国人のセラーが妙な日本語で返事を書いてきたら、沸騰していた感情が「まあ、しょうがないなぁ、、、」ってなるでしょう?これが世の中の荒波を上手に泳ぎ続けるための悪知恵というやつですね。こういう細かい打算ができるのも、長年の商売で培った処世術と言えましょう。要するに、こいつは今どきAIも使わないで下手クソな外国語の文章を自分で頑張って書いている不器用なやつなんだ、と誤解させる高度な演出ですね。あまりの自分の狡猾さに昏倒寸前の状態です。狡猾という面もあるけど、自分をスマートに見せるだけが最良の策ではないし、自分の実力以上に振る舞っても後々あまり良いことはないという経験則と言えるかもしれません。とにかく自分の実力以上のことAIにやらせよう!という方法ばかり叫ばれる中では「自分の身の程ぐらいの能力でAIに仕事をさせる」というなかなか斬新なAIの活用方法だと思います。

しかもこの程度の英語なら、gemini-2.5-flash-liteという深く考えるのは苦手だけど爆速で出力してくれるモデルが使えます。APIの料金も瀑安で1通の返事を書くのに0.x円程度の世界。せっかくAIを使っているのだから、メールの返事は秒で済ませたいですよね。


毎月20ドル程度の課金で、結構な働きをしてくれるAIエージェントのサブスクリプション。月額3,000円くらいで専属のプログラマーと事務員と英語通訳を雇ったようなものです。これを「いい時代になった」と言わずして何と言えばいいのか、本当に感心しました。

ちなみに、AIエージェントに作ってもらったChrome拡張機能やら秀丸マクロやらは、サブスクリプションを解約しても普通に動きます。作ってもらったら自分のものになるというのは、なかなか良心的な話ではありませんか。Adobeや弥生会計にこの誠実な態度を見せてやりたいよ。解約後も動き続けるだろうプログラムを眺めながら「こいつはなかなか気の利いた置き土産だ」と思った次第であります(まだ解約していないけど)。

そんなわけで、朝の入力地獄から解放された店主なのでした。何とも気分のいい朝だなぁ。