2026年4月28日火曜日

仕事中に音楽は要らない

私は仕事中に音楽を聴くのが嫌いです。

世間では「作業用BGMで集中力アップ!」とか「仕事がはかどるプレイリスト」みたいなものが大量に出回っておりますが、私にとっては何の効果もないどころか、むしろ邪魔でしかありません。邪魔なものは邪魔です。数日間の間だとしても3回同じ曲が流れたらもう聞きたくない、5回も6回も同じ曲を聞かされたら「その曲はもういい、いい加減にしろ」と気が狂いそうになって、こうなると仕事に集中どころではありません。すでに鉄のバールを持って天誅を加えてやろうという段階になっています。

思い返せば、若い頃はそこそこ音楽が好きだと思っていたんですよ。CDをたくさん買って集めてみたり、まあそれなりに聴いたりして。でも今になって冷静に振り返ると、あれは「好き」だったのではなく「周りが聴いているから何となく聴いていた」とか「人間というのは音楽が基本的に好きなのだという思い込み」という話だったのではないかと。要するに勘違いです。長年「俺は音楽好きみたいだ」と自己申告してきたわけですが、実態は大して興味がなかったということに、この歳になってようやく気づいたのでした。人間、自分のことがわかるまでに何十年もかかるものです。

じゃあ仕事中に無音かというと、それはそれで少々寂しい。冬の寒い時期に一人で寒々しい無音の工房で作業をしている姿を想像してほしい。孤独死まであと一歩という気がしてきます。

そこで私がやっているのは、仕事場に43インチぐらいのテレビを置いて、流し見できる番組を延々と流すという方法であります。これがなかなか具合が良いのです。音楽と違って、チラッと画面を見れば風景が映っていたり猫が歩いていたりして、それだけで何となく気分が良くなる。耳から入ってくる音も、歌詞のある音楽と違って「意味を拾おう」としなくて済むから、脳のリソースを持っていかれないのです。

ただし、流す番組の選択は非常に重要です。ここを間違えると大変なことになる。今日のブログで大切なのはここからの説明ですよ。

たとえば連続テレビ小説とか大河ドラマのような、ストーリーを常に追いかけていないと話がさっぱりわからなくなる類のものは絶対にダメです。気がつくとテレビに釘付けになって仕事の手が完全に止まっている。15分のドラマを見終わって「さて仕事するか」と振り返ると、机の上には1時間前と全く同じ状態の仕事が鎮座しているわけです。これでは本末転倒も甚だしい。

では何を流すのかというと、私のおすすめはこういう番組です。

「岩合光昭の世界ネコ歩き」――猫が歩いている。ひたすら歩いている。たまに寝ている。それだけ。しかしそれが良い。ちらっと画面を見ると異国の路地で猫がゴロンとしている。それだけで十分に癒される。岩合さんの「あ、いいこだねぇ」という声が遠くから聞こえてくるのも実に心地よいのであります。

「ワイルドライフ」――アフリカだかアマゾンだかで動物がウロウロしている。ライオンがシマウマを狙っているシーンで「おっ」と思って画面を見ると、もう次のシーンに切り替わっている。それぐらいの距離感がちょうど良いのです。

「世界ふれあい街歩き」――知らない街を歩いている映像がただ流れている。知らない言語が聞こえてくる。何を言っているかわからない。けれどもそれが全く苦にならないどころか、むしろ作業の邪魔にならなくて非常に良い。

「世界入りにくい居酒屋」――見たことのない国の、見たことのない酒場で、見たことのないけど明らかに陽気なオッサンたちが楽しそうに飲んでいる。何を食べているのかたまに気になってチラ見する程度。それで十分です。

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」――太川さんと蛭子さんがバス停で途方に暮れている。画面をチラっと見ると蛭子さんが何かまずいことを言って太川さんが困っている。それを見ているマドンナの反応も人それぞれで面白い。それだけで何となく笑える。

「ドキュメント72時間」――どこかの場所に72時間カメラを据えて、来る人来る人に話を聞いている。別に聞いていなくても良い。聞こえてきたエピソードが良い話だったら「へぇ」と思う。それだけ。

要するに共通点は「適当にTV画面をチラ見して、聞き流す程度で成立する内容」ということであります。

そしてこの「チラ見程度」というのが大きな副産物を生むのですよ。何しろ、ちゃんと見ていないから内容をほとんど覚えていないのです。だから全エピソードを一周して2周目に突入しても全く気にならない。「あれ、この回見たっけ?」という程度で、見たような見ていないような、そんな曖昧な記憶しか残っていない。これは素晴らしいことです。コンテンツの無限ループが成立する。サブスクリプションのコスパとしてはこれ以上のものは無いでしょう。

ちなみにこれらの番組はほとんどがNHKオンデマンドのコンテンツです。月額990円(まあ1000円みたいなもの)のサブスクリプションを払っているわけですが、仕事中ずっと流しているので、1日8時間として月に160時間以上は再生していることになる。1時間あたり6円ちょっとです。缶ジュースより安い。これはもう笑ってしまうぐらいのコストパフォーマンスであります。

NHKの受信料が高いとか色々と文句を言う人はいますが、少なくともNHKオンデマンドに関しては、私は毎月1000円で得しかしていないと断言できます。NHKさん、こんなに見ていてすみません。

というわけで、仕事中に音楽を聴く皆さまには申し訳ないのですが、私は音楽よりも猫が歩いている映像の方が遥かに仕事がはかどるという、まあ、何とも申し上げようのない話なのでした。

それでも仕事が立て込んでいるともう映像どころではなく、最後はもう何でも良いやとなり、ヤケクソで長時間の波の音とか川のせせらぎ音などの自然音のYoutube番組を延々と流している、そうなってしまうのですね。