2014年10月28日火曜日

30年前の油圧クリッカー

何度かネタにしていますけど、この非常に重宝しているこの油圧クリッカー。


以前、モーターが逝かれて交換したときにモーターの製造年を見たら、その時点で27年前ぐらいでしたので、現状製造されてから30年ぐらい経っているのではないでしょうか。今でも普通に何の問題も無く動きます。

私が買って7年ぐらい経つのではないかと思いますが、故障と言ったら電気の配線が切れたとか、油圧のホースに穴が空いて交換したとか、モーターが寿命になって交換したぐらいで、至極丈夫というかメンテナンスコストがかかりません。とにかく単純な構造なので、滅多に壊れるものではありません。


小型であまりパワーはありませんが、上下運動が割と速いので、小さなパーツを延々と裁断するのに非常に重宝します。


しかもこの無駄のなさ。上手くカットすれば材料の無駄は最小限ですみます。今時ゴミ処理にも金がかかるのですよ。

しかも100V駆動。コンセントに電源を差し込めば動きます。モーターのパワーは1kwで、ちょっと大きいですけど、エアコンよりは小さいです。100Vで動いてくれるクリッカーなどなかなか出てきません。モーターは汎用ですので、規格が合うものなら東芝でも富士電機でもパナソニックでも何でも良いです。1.5kwの電気を使ったとしても1時間使って30円ぐらいの電気料金、それほど気にしなくても良いよね。

42万円で購入したのですが、速攻で元が引けたのは言うまでもありません。元が引けるとかの話しではなく、一体この機械がどれだけ稼いだろうか、という稼ぎっぷりです。
恐らく手放すときも40万円でも買う人が居ると思います。何と言っても100V駆動で故障はほとんど無し、油圧ホースとモーター交換済み。別に売るつもりはないですけど。よく売ってくれって言われるのです。油圧クリッカーを導入したいけど、動力電源を引くのは嫌だとか出来ないとか、だいたいウチだって動力引いてないです。

油圧ホースとモーターさえ手に入ればあと50年でも普通に動きそうな機械です。



革の裁断だけではありません。ちょっと工夫すれば色々出来たりします。
点頭に並べるようなものの場合、きちんと貼り付けられていないと見栄えが悪いので、こんな感じで革を貼る位置をつけて、台紙に綺麗に貼り付ける、ということも求められたりします。

2014年10月27日月曜日

立体成型ペントレーの試作

革の立体成型いわゆる革絞りも、売れるかどうかではなく、どれだけきつい絞りで成形できるかというのが興味の方向になっております。

今回は、2枚合わせで、セパレートになっていて、表裏を違う絞りで、テーパーをつけてある、この方向です。


まずモデリング。どうやって大きさを決めるのか、というと、手持ちの刃型に合わせてサイズを決めるのです。新たに刃型を作ると邪魔だというのが大きな理由です。


成形物も元は1枚の平面の革から絞り上げるのですが、モデリングの方も1枚の平面からグイグイ引っ張って変形させて立体にします。何と実際の革絞りと同じようなことをやっています。まあ下手は下手なりに、それなりのシングルサーフェイスでモデリングです。


底面に足をつけて全体的に傾きを出すという工夫をするのですが、ペントレー自体は横から見ても傾いていないように見せる、まあそういう方向です。


これは、なかなかきつい絞りですよ。セパレーターの壁は10mmほどの高さです。一枚の革に圧をかけて変形させるのですが、絞った自分でもよく破れないものだとちょっと感心します。


ほら、尖っているよね。力押しすれば間違いなく破れると思います。
このあたりもちょっと再考してモデリングをやり直します。

成形品というのは、作らないとわからないというのが大きな問題です。画面でいくら眺めて、これでOKでも、作ると「あぁぁ、、、」ってなります。


今回も絞って成形して気づいたのが、真ん中の仕切りの間が狭いんだ。20mmの幅を取ってあるので、ペンを置くのは問題無いのですが、ビジュアル的に狭いのです。


この底面の足で傾きを出していて、設計は問題無いのですが、これも実際にデスクに置いてみると、、、


何か妙に傾いているように見えます。設計は間違いなく水平になるようになっていて、実際に水平とかそれに近くなっているはずなのですが、視覚効果ではなんか左が下がっているように見えるのです。

視覚効果というのは画面上ではよくわからないのですから、実に難しいですね。
せっかく切削して勿体ないですけど、絞り型は廃棄です。

2014年10月23日木曜日

毎度毎度のMAIIIクリッカー輸入通関

毎度となりましたMAIIIクリッカー輸入通関です。
ウチが輸入総代理店になってもう5年ぐらい経つのではないでしょうか。自分でもよく覚えていませんが、毎年4,5回輸入通関に行きます。

これも不思議なことで毎年売れる数がだいたい決まっているのです。それほど大きな変化はありませんが、今年はちょっと少なかったです。理由は明白で、消費税の増税による消費の落ち込み、これに尽きます。

消費税増税をしても3ヶ月もしたら消費が戻るとか曰っていた紫髪のオバハンとかを筆頭にそういう連中は誰も責任など取りません。メディアなんかに出ているいわゆる有識者とかいう奴らは、もうホント無責任そのものです。私がTVや新聞を全く見たり読んだりしないのは、見るといい加減な話しばかりで腹が立つからで、精神によろしくないからです。TVや新聞を見ないのは私だけの話ではなく、今の若者は新聞などデフォルトで購読しません。金払って気分の悪くなったりするようなものを見たり読んだりする方がおかしいんです。今時の若者は随分と賢いししっかりしているな、80年代に若者だった私の世代よりもずっとしっかりしてる。ホント感心するよ。未だにメディア頼りのそこの人、いい歳して「今時の若者は~」とか情けない愚痴垂れていないでまずオマエらが若者を見習え

ウチはMAIIIクリッカーが売れなかったとしても、大して困るわけではないから別に良いですけど、増税のせいでものが売れなくて困った企業も多いのではないでしょうか。まるっきりの愚策でしたね。今からでも消費税廃止にしたらどう?たぶん消費税を上げるより税収が増えるよ、って言っても絶対そんなことはやりゃあしませんけどね。失政を認めたことになって、誰かが責任を取らなければいけなくなりますから。あーそうですか、それじゃあもう勝手にやってれば?って気分ですけど、愚にもつかない失政に無理矢理つきあわされている身としてはもう馬鹿馬鹿しくてやってられないです。

それでも15台ぐらい少ない程度で、年間契約台数は軽くクリア。また来年も引き続きウチが総代理店継続です。


毎度同じです。安定した日常というのはルーティーンで成り立っております。
税関にこのKIOSKという端末が装備されてから、輸入申告がとんでもなく楽になりました。申告書などたまにやる素人が書類を書いても、間違いだらけで非常に見苦しいものになってしまうのです。


KIOSKは簡単。コラムを埋めていけば良いんです。でもプログラムにバグが結構あります。


消費税8%になって、輸入時に支払う税金も当然増えました。
でもたくさん払った分だけ役所の仕事が早くなるわけではありません。

通関で待っている間はやることなどありません。ヒマです。スマホいじることにします。誰か呼んでやれ。


平日の昼間からヒマしているヤツなどいるのか、、、というご心配は無用。居るんだ居るんだ、海の向こうの沖縄のちょっと南の方に、とってもヒマしていて本人も認める遊手好閒的人(ブラブラしている暇人)が。チャット友達である台湾娘のお母さんだ。呼ばれなくても昼間っからラインをキンコンキンコン鳴らしてくるぐらいですから、今日も普通にヒマしています。



有人在無?(誰か居ますか?)
--- 有,要找誰人?(居るよ、誰をお捜し?)

オメーしかいねえだろ。

しばらくチャットして過ごします。


11時頃、太鼓の音と共に「苦しゅうない!そこの者に輸入許可を下すぞ、有難くたもれーっ!」というかけ声が下り、「謹んで賜ります!」と私は作法通りに答え、平伏しながらの姿勢で前進して、輸入許可通知書をとにかく失礼の無いように丁重に受け取ったのでした、というのはもちろんウソです。

11時半を過ぎると午前中に荷物を積んでくれないんです。11時過ぎると気分がジリジリして、早よ許可通知を寄越せこらっ!と言いたいところですが、そんなことも言いません。何と言っても大人だからな。そんなことを言ったら、余計後回しにされるのが目に見えています。どうしてそんなことがわかるのか?と言ったら、俺がそういう人間だからよくわかるんだよ。


ヨシ、午前中に積んだ。


一安心で昼飯。このあたりは倉庫街で店など何もありませんから、福祉センターという港で働く人たちのための安い食堂があるのです。


ちゃんぽん定食にしました。今時500円。学食並みです。目一杯の炭水化物。これを平らげたら随分と元気が出そうだなぁ、健康的な食事かどうかはわかりませんけど。

これじゃあ昼飯食ってから荷物積んでも大して変わらんだろ?と思うかも知れませんが、まあそう言われたらその通りですとしか言いようがありませんが、気分の問題です。


昼から親父を呼んできて荷物をバラします。
またこの親父も親父で、年金という金をいただいて飯を食わしてもらっている社会の穀潰しのくせしやがって「今日はやりきれないだろうなぁ」とか、やる前から余裕ぶっこいてやがるんです。
「やれるだけやってくれりゃいいんだよ、全部今日やれなんて言ってねえんだよ」と釘を刺して、やる気の無い年金生活者に活を入れてやります。

無理して長生きしてくれなくても良い人間が世間にお情けで置いて貰っているんだから、少しは社会の役に立てって言うんだよな、みんなそう思わないか?今時の年寄りはそういう自覚がないんだよ、全くどいつもこいつも使えねえやつらばっかりでホント困ったもんだよ。


12台行き先が決まってますので、また手配しなくてはなりません。

こんな感じで、平和な一日が終わったのでした。



2014年10月22日水曜日

何はともあれ、モデリングの修行

私は現状、三次元モデリングが実に下手くそだという自覚の元、時間があれば三次元モデリングの練習をしています。いつもライノでモデリングをされている他人様のサイトを見ていて、ジュエリーの世界はすごいと感心します。どこの世界にも達人がいて、ライノの世界にも達人がいらっしゃるのです。このサイト

ライノ日記

ライノでモデリングをされたことがない方には一体何がすごいのかわからないと思いますが、とにかく達人なのです。シングルサーフェイス(一枚の紙を伸ばしたり縮めたりという感じ)でほとんどモデリングをしてしまうのがとにかくすごい。

私もここに出ている例題みたいなのを見て、あれこれいじっているうちにちょっとだけ上手くなりました。

http://rhinoman.exblog.jp/20847297/

例えばこの投稿にある ぷっくりスター。

私が描くとこんな感じ。

アイソカーブを見ると、だいたい合っているような気がするんですけど。微妙に違うような気もします。ライノでモデリングをされない方は、一体何がすごいのかさっぱりわからないと思いますが、簡単に見える形状でもオルガニックな形状はなかなか描けないのです。


制御点を表示するとこんな感じ。

制御点ってのはオモリ(重り、ウェイト)みたいなものです。風船にあちこちオモリをつけて引っ張って上の画像のような形を作っていく感じです。きつく引っ張れば尖るし、緩ければ丸みが出る。そしてオモリですから、オモリを重くしたり軽くしたりして調整するわけです。たくさんオモリをつければ形状が安定するようにも見えますが、オモリがたくさんになればモデリングが面倒だし、往々にしてデータが汚くなるので、最小限の制御点で形状を作るように努力するということになるわけです。うーむ、これは実に的確な解説だなと自分で書いていて感心してしまいました。
3次元モデリングというのは実に面倒なことをするのだな、と思われるかも知れませんが、これは一つの手法で他にも色々あります。が、しかしどれもやっぱりそれなりに簡単ではありません。複雑なモデリングをいとも簡単にやってる達人たちは、それはツールのすばらしさ以上に経験とか才能でものを言わせているわけです。


何が微妙に違うかというと、該当ページには角が出ているって書いてあるんです。
私がモデリングしたものは、上のようにメチャメチャ拡大するとピンカドになっていないんです。
それがあまり問題になることはないと思いますが、やっぱり微妙に違う。

次はこのページ http://rhinoman.exblog.jp/20845967/


こちらはだいたい合っているような気がします。アイソカーブの数は同じです。


とにかく制御点を最少に押さえてシングルサーフェイスでモデリングをするのが達人の方法のようです。
どうしてここまでシングルサーフェイスに拘るのだろうか?と最初は思ったのですが、やってみてわかりました。ライノの奥深くを探求しているようで実に面白いのです。サーフェスもデータもスッキリしていて綺麗だし、これこそがNURBSモデラーであるライノの本来の使い方なのだろうなぁ、という気がします。

こちらのページhttp://rhinoman.exblog.jp/18788041/ にあるクリームは割と簡単にできました。


Scale2DとTwistだけで描けたような気がします。


http://rhinoman.exblog.jp/20845804/

このお題は、ちょっと違うか。平面にあるアイソカーブが私のものは多い。再考の必要ありです。


そういう修行の延長で、私も最近はとりあえずできる限りシングルサーフェイスでモデリングするようになってます。自分が描いたものでも汚いデータってのは、実に気が滅入るんです。制御点をできる限り少なくしてシンプルで美しい三次元データを描きたいというふうになるんです。

事の本質からすると、出来上がった製品がきちんとしたものであれば、ぶっちゃけ途中のデータは汚かろうが綺麗だろうがどうでも良いはずなんですけど、ショボいものを作っている身でありながら、自分でデータを描いていると、データは神聖不可侵なものである、という原理主義者みたいになってくるのが不思議なものです(みんながみんなそうだとは言いませんが)。


まあアプリケーションというのは、購入すればそれで終わりというわけではなく、使いこなせるようになるまでが一苦労で、しかも根気も根性も要る長い道のりで、まさに人生そのもののようなそんな気がするのでした。




2014年10月19日日曜日

恐らく世界初の革キット

私は以前から革キットというものを作りたかったのです。
実際作ったことはあるのですが、これと言って特異点がなかったので、売るのをやめたとかそんな感じです。
革キットというのは東急ハンズなんかで見たことがあると思いますが、結局菱目打ちとかの道具をわざわざ買って用意しないといけないので、ちょっとやってみようというには敷居が少々高いのです。菱目だって4本目と2本目を揃えたら安いものでも4000円ぐらいするのではないでしょうか。

穴を最初から開けてあるキットというのもあったような気がしますが、縫い穴というのは貼り合わせるとなかなか合わないのです。結局貼り合わせてから縫い穴を開けた方が確実なのです。

今更パスケースとか似たり寄ったりなものを作っても面白くないだろうと言うことで、何と革絞りのキットを作ったのでありまーす。




革絞り(立体成型)してある革キットなんて見たことがないです。私が知らないだけですか?そうですか。


では縫い穴の位置をすべてエンボスしてある革キットというのは見たことが無いのではないでしょうか。これに合わせて、菱ギリで穴を開けていけば設計通りの場所に縫い穴を開けることが出来ます。


こういう穴位置用の型を設計して、実際に作ったのです。
穴位置はきちんと合うように設計してありますので、ズレるということがありません。こういうのはやっぱりCADの設計というものです。型紙をフリーハンドで描いてとかだとこういうものは出来ません。


ウチも革業界の一端ですけど、もう初っぱなの思想とか世界観が全く違うということはご覧いただけると思います。

革絞りで縫い穴位置がつけてある革キットというなら世界初でしょう、たぶん。


必要なのは、菱ギリと針、カッターナイフぐらいです。菱ギリというのがミソです。菱目打ちだと目が合いません。


まあ毎度の事ですが、刃型も自分で曲げたのでありまーす。
設計、絞り型切削、刃型製作、絞り成形とほぼ完全にすべてウチで完結しています。やっていないことと言ったら牛を飼うことと革をなめすことでしょう。


成形途中はこんな感じ。


刃型を合わせるガイドラインとか、フラップをつけるガイドラインとか色々なラインを最初からつけてあります。もうすっかり抜かりがないんです。

というわけで、恐らく世界初の革キット、作って販売してみたのでした。こちらのページ

これだけだとちょっとだけ面白みに欠けると思い、更に一段進化させてみました。


サイズを変えると刃型も作り直しになって面倒なので、同じサイズで二股に分かれている絞り型をモデリングしました。

正直もうしまして、完全に2本に分かれているのは存在していますので、自然と真ん中で分かれていて、口の方と先の方はこれまた自然に平たくなっていたり、丸くなっていたりというナチュラルな雰囲気で二股に分かれるものというのが今回のモデリングテーマです。


どうです?ちょっと半乾きですのでムラがありますけど、なかなかいけてますよ。


赤のオイルヌメでも作ってみました。



ご覧いただきたいのはこの部分。中間部分はかなり強引に絞っていますが割とナチュラルに球形に戻しております。


開口部側もナチュラルに平面戻し。


こういうことをソリッドでやろうとするとかなり複雑で相当な苦労を覚悟のモデリングになってしまいますが、難しいことを考えずにシングルサーフェスで制御点を引っ張って作るとモデリングは楽ちんだし、凹凸型のクリアランスを取るのも楽だし、データも軽いし、良いことづくめだな、ということを覚えたのでありまーす。


ワイヤーフレームで見ると制御点こんだけ。U:11 V:14。実にシンプルで爽快。スッキリ爽やかコカコーラだ。


せっかく作ったので、こっちもそのうちキットで出そうと思います。

2014年10月14日火曜日

ニューヨーカーのRollei TLR

希に中古カメラには、持ち主の名前が書いてあったりすることがあります。田中長徳先生の本にもそんなエッセイがあって、アメリカの中古カメラには

Stolen from John Doe すなわち、誰それから盗まれたカメラ

と彫り込みがしてあることがあるという、日本人とはあきらかに文化が違うという話しがあったような気がします。私も名前が彫り込んであるのを見たりしますが、さすがにStolenものは見たことがありません。

今回貼り替えをしているローライTLRには、住所と名前が書いてありました。


他人様のカメラですので、多少ぼかしを入れてあります。
住所を見るとNYですよ。何とニューヨーカーのローライTLRなのです。

一体どんなところなのでしょうか?


Google ストリートビューで一発。
現在は駐車場になってしまっているようです。

「おい、ローライオーナーのエドはどこ行った?」
近所に片っ端から電話してやろうか?


間違えた。こっちの方向だった、、、。エドはまだ生きているだろうか?
なんかウチと同じぐらいの規模の家に住んでいますね。

一台の中古カメラにも色々歴史があるものです。今時自分のカメラに名前と住所を書いている人はまずいないと思いますが、一応名前を彫り込んでおくと、後生の収集家に楽しみを一つ増やしてあげられるかも知れません。