何と言っても角形で、22mmほどの深さが必要なので、なかなか難しそうです。革絞りも丸みがあると楽なのです。垂直で角形となると、一カ所に結構な力がかかるのです。
というわけで逝ってみよう。
ベースとなるブロックを描きます。
片側は開口部になるのでカットしてしまいますから、絞りやすい丸い形状にしておきます。カクカクなところは破れやすいのです。
最初から開口しておけば?と思われるかも知れませんが、それだと上手いこと絞れないのです。
あと、結構深いので、垂直にすると絞れたとしても型を抜くのが大変になりますから抜き勾配を多少つけておきます。絞った後で垂直に直してやれば良いのです。
さあ切削。一発目というのは大概上手くいかないものですので、適当にやっておきます。
削り上がったブロックの掃除もせずにいきなり絞ってしまいましたので、削りくずがついてしまっております。いい加減な性格ですね。
片側を開口させて、タバコの箱を入れてみます。
抜き勾配がついたままで、垂直に直していないので、ちょっとはみ出していますね。後で直しますから、このまま進みます。
上手いこと合うようにフラップを何度かカットしてデータを作ります。
フラップの止めを作って仮合わせをします。
縫製ガイドラインと本裁ちガイドラインが革表面に押しでつけてあるのがご覧いただけると思います。
ミシン縫製です。ミシンの針を止めているネジが立体部分にガンガン当たりながら縫っていきます。20mm以上あるのですから仕方がありません。これも後で何とかします。後で後で、って何か策があるのでしょうか?さぁわかりません。
縫製を終えて、本裁ちを終えた状態です。全体的に丸みがありますね。丸みがあるとタバコの箱は入りません。
染めも面倒なのでどぶ漬けします。
染色して、形状の調整をしました。調整方法は秘密です。教えません。
きちんと角を出しています。
カチッと入りました。見事な深絞りです。しかも垂直に角を出して絞っています。
半素人がここまでやれば、もう正気の沙汰ではないと言って良いレベルですね。気違いと呼んでくださって一向にに差し支えありません。
横から見ても、多少抜き勾配が残っていますけど、まあほぼ垂直に近くなっています。
ここで私は大変なことに気がついたのでした。
タバコは100mmと90mmがあるのですね。一般的に90mmが主流のようです。100mmに合わせて作ってしまったです。
大は小を兼ねそうにも思えますが、そうはいきません。90mmを入れたらこんな感じになってしもたです。90mmはまた設計し直しです。気違いだけではなく、どこか抜けているというオチまでついてしまいました。
だがちょっと待って欲しい。
「蔡大叔(蔡のおじさん=私のこと)は天才だ」と威張りながら見せていた知り合いの台湾人の奥さんが、ご主人にこの問題を話したところ
再度絞り型を削る必要は無い。
10mmのクッションを底に入れれば解決する。
という驚くべきアイデアを提示してきたのでした。これは私は思いもつかなかったです。頭が良いな。専門ではない人はたまにものすごく良いアイデアを出しますね。というか私が鈍いだけか?
「しかしこういう声もある」「さまざまな声に耳を傾けてほしい」「波紋を広げそうだ」「議論を呼ぶのは必至だ」
うーん、天声人語がよく使うフレーズ通りになったな。
ほいでもカッコええでぇ。
ちょっと持ってみたくなっちゃうよ。
ベルト周りが賑やかになります。