「革のレンズフードとか出来ないものですか?」と聞かれて、
「販売をしてお金をいただけるような製品レベルのものになるかどうかは微妙ですが、革を絞って出来ない形状ではないです」
と答えましたところ、どこの革工房に聞いても「そんなの絶対に無理」と言われ続けたそうで、そりゃあ3次元モデリングが出来なければ不可能でしょう。立体成型となると、これはハンドメイドとか言っている革工房の世界とは全く違う分野ですので、ということで、話が盛り上がって、製品にならなくても試作までなら充分形になるのは間違いないと言うことで、雑誌のページまで確保していただくことになって、やることにいたしました。
ご要望は39mm, 49mmなどのよくある径の角形フードと言うことです。
しかし角形フードは難しいのです。というのはレンズにねじ込んでフードをつける事になるのでしょうけど、レンズによって、きちんとした位置にフードがはまるわけではないからです。
しかしこのあたりを考えていると、全く先に進んでいきませんので、もうそれは後から考えることにしてとりあえず何か適当なカメラで試作してみましょう。
ということで、手元にあったRX100でやってみるか
ちょっと線が見にくいかと思いますが、大きなレンズフードを作っても邪魔ですので、鏡胴の大きさを基本に設計していきます。角形フードの角部分はChamfer(面取り)して、ちょっと格好良くします。
これはFillet(丸面取り)をするよりも、形状がよく締まる気がします。
初めてやることですので、設計など超適当。だいたいこんな感じで何とかなるんじゃないかな?というノリで作ってみます。こういうのはスクリーン内でいくら眺めていてもわかりませんので、とりあえず実物を作ってしまって、悪い部分を直していくという、割と気の長い作業となります。
フードの内面は黒スエードを貼らないとかっこわるいですので、その部分のクリアランスを考慮して、凹凸の成形型をモデリング。
成形型の削り出し。凹型に穴を開けてあるのは、革を絞った後でここをつついて型を外すためです。
ベースの革にスエードを貼り合わせます。
水を含ませるであります。容器が汚いのは気にしないで欲しいのであります。
凹凸型に革を挟み込んで、圧をかけて絞り成形をします。
絞っている状態。
余った革をトリムした状態。しばらくこのまま置いておきます。
成形型から外した状態です。
まあ最初の一発目にしてはそれなりの形になっています。
またまた用意の良い事に、矢印のところには穴を開けるための刃型を合わせるガイド線の溝が入っているのであります。
ちょうど合う刃型もなぜかどこかに転がっているのです。
そして穴を開けた状態。
まあ失敗を期待された方には大変申し訳ないことなのですが、結果としてそれなりに出来ました。
改善の余地は山のようにありますが、これぐらいの成形は普通に出来てしまうのです。
「そんなの絶対無理」と澤村さんに言い切ってしまった方々、また恥をかかせてしまってスマン事ですが、私が作ってしまいました。
それはよしとして、どうも面を取り過ぎている気がしますね。そして液晶で確認してみると、広角側で後5mmほどフードを伸ばしても蹴られない感じです。もうちょっとフードを伸ばした方が格好良さそうです。
まあとりあえず、本日は再度モデリング修正して、再度型を削り出して作り直してみたいと思います。
では、試作2号のモデリングをいたしました。多少フードが深くなって、面取りが浅くなって、クリアランスを多めに取るところは多めにして、狭くするところは狭くし、形状を決めたというところです。
そして切削の準備。
そんなに時間はかからないですけど、2時間ぐらいはかかります。
そして成形型の切削。
現在11時半ぐらいですから、終わるのは1時半ぐらいでしょうか。それまでしばらく違う仕事をすることにいたします。
1時半に切削終了して、早速絞ってみました。
カット面が汚いのは、生乾きのままカットしているからです。すみません。
ちょっと深くしたら、断然良くなったような気がします。もうちょっと深いともっと格好いいでしょうけど、これ以上深くすると蹴られてしまいます。これがギリギリです。
これは、もう商品になりそうですね。レンズに装着するのは両面テープしか現実的にありませんが、一度つけたらそれほど外すものとは思えないというか、つけっぱなしの人向け。ドーナツ型の両面テープを2セットぐらい余分につけておけばそれほど問題と思います。
ではせっかくですからサンプルを作って、近いうちに販売してみたいと思います。お値段はどうかなぁ、4000円税送料込みぐらいで良いでしょうかねぇ。
もしかして違うカメラにもつくかも、と思ってXF1につけてみました。
XF1はCMOSだかCCDのサイズが小さいので、これだと25mmのワイド側いっぱいに振っても全然蹴られません。もっと小さいサイズで問題なさそうです。
これはせっかくだから小さめのものを作ってみよう。
なかなか久しぶりにやりがいがありそうな仕事が見つかったような気がします。