2022年4月11日月曜日

小径車の沼 俺の14インチ "ダホンスイートピー" 力づく改造車

小径車と言うのは実に奥が深い世界で、私も当初20インチの自転車が小径車ぐらいに思っておりました。


Dahon Boardwalk D7。これが20インチ。
2017年製ぐらいだと思います。タダみたいな値段で譲ってもらって、手前でフロント52-39Tダブル+リア12-25Tの8速 x 2 = 計16段変速(でもギアかぶりは7割)というカスタムをしました。完全オーバースペックな気がしますが、脚力を考えるとギアがたくさんあって困ることはありません。


後輪スポークが逆イタリアンというのがどうしても気に入らないので、スポークをイタリアンに組み直しました。今、かみさんが気に入って乗っているものです。
細フレームの美しさが際立っています。サスペンションがついていないのですが、鉄フレームのしなりが振動をいい具合に吸収してくれてケツが痛くなりません。もうアルミフレームには乗りたくないと思わせる一品です。
フレームがねじれに弱く、グイグイとダンシングしながら乗るとフワフワするという評価がありますが、折りたたみ自転車でそんな乗り方をするほうが間違っている気がします。私は折りたたみ自転車で立ち漕ぎなんかしませんよ。そもそも膝に負担をかける立ち漕ぎなど50過ぎた人間がやることではありません。筋肉は鍛えれば増えますが、関節はひたすら消耗するだけです。老いても自分の足で歩きたければ、立ち漕ぎはやめて、低速ギアを増やしましょう。

「ゆるキャン」でシマリンが乗っていたのもダホンボードウォークですね。うーんシマリン、良い選択してます。でも、私のボードウォークみたいにフロントダブルという気合いが入ったカスタムをしているとは思えません。

20インチに慣れると何故か物足りなくなります。もっと乗りやすくて速く走れる大径ホイールに向かうのではなく、なぜかもっと乗りにくくて苦労する小径の方に気持ちが向いてくるのが不思議なところです。乗りやすくてスピードが出る方に向かうというのは、そんなのは至って普通の人間のやることですから、普通の人間に好きなだけやらせておけば良い。私には大して興味のわかないことです。頭のイカれた人間は普通の人間とは真逆の方面に思い切り突っ走っていく、そういう習性があります。
イカれた人間にとって「頭がおかしい」というのは一種の称賛であり、「普通だな」と言われるのは忸怩たる思いを抱かせるものがあります。




2001年製、台湾ブロンプトン。台湾製の古いものとは言え、ブロンプトンとしては驚くべき価格(安い方)で譲ってもらいました。これは16インチ車ですが、実際は18インチ(349サイズ)ほどなのでまあまあ小径車という感じです。

ペダルと前輪クイック以外の赤いパーツは3Dプリントした自作パーツという、大変な気合いの入りようです。

もともと内装3速でしたが、坂ばかりのウチの周りではとても3段では間に合わないので、スターメーアーチャー内装5段に交換しました。ブロンプトンのリアエンド112mm幅にシマノの内装ギアでつくものはありません。


もともとJIS組でしたがやっぱりリムブレーキはイタリアン組というセオリー通りじゃないと気分が悪いので手前でスポークを組みました。フロントもバラしてイタリアンに組み直し。正直小径ホイールなど4本組ならどんな組み方しても一緒のような気がしますが、気分の問題です。


何度見ても芸術的な美しい折りたたみ姿。これに比べるとダホンの折りたたみ姿は実にダラシないです。

かみさん用にもう一台のブロンプトン(2016年UK製)を調達して、5速にホイールを組み直したのですが、ギアが少なくて乗りにくいといって乗らないので、ブロンプトンが1台余りました。売るのも面倒なのでそのまま畳んで保管してあります。もったいない事ですが、畳んでおけばそれほど邪魔にならないところが良いところです。

ブロンプトンはとても気に入っています。でもまだ深い沼にハマりたがるのが人間の不思議なところです。もっと窮屈で走らない更に小径ホイールがあるではないか。14インチだ。小径車はホイール径が小さくなればなるほどマニア度が上がるという世界のようです。

Dahon Sweet Pea。14インチ。普通14インチならDahon K3とかDove Plusとかを買うだろう?と思われるかもしれませんが、「お前、今"普通"って言ったな?」(笑)。K3なんて今日本で一番売れているDahon車だそうじゃないか。そんな普通の人間が乗るようなものは、変人には必要ありません。そんな売れ筋の自転車に乗ったりしたら変人の名折れだ。

2006年製ぐらいでしょうか。友達が所有していたものを譲り受けました。ギアなしシングルスピード。シングルスピードは不便だからギアがつけられないだろうか?と相談されたところ、色々アイデアを考えながら出していたのですが、もういっそのこと私が引き取ってギアつけますという話になって入手となりました。要は小銭渡して巻き上げてきた、というのが実際のところかもしれません。

見た感じ小学校高学年の女の子向けという雰囲気が漂っています。大人が乗るには少々無理がある気がしますが、そんなの重々承知です。

「少々頭のおかしい大人が力づくで子供用自転車を乗り回している図」を想像したら、まさにそれを現実世界で実践している感じです。実際にこれに乗って街を走っていたら、子供用自転車に乗った小学生低学年ぐらいの女の子が、珍しい動物を見るような目で私を見ていました。

「こんな小さな子にまで頭のイカれた人間だと思われている!」

私は恍惚感をいだき、うっかり別世界に昇天しそうになりました。

坂の多い地域に住んでいると3速でも足りないのにシングルスピードはもう完全に話になりません。またこれに無理やりギアを付け足してやります。無駄なチャレンジ精神が湧き上がってきますね。
しかしリアエンド幅が112mmというブロンプトンと同じ狭さなので選択が少ないです。アルミフレームなので力づくでエンド幅を広げるなどということも出来ません。出来るとしてもそれはやりたくないです。


しかもフレームのリア形状が左右異型という片持フレームみたいなわけのわからない構造で、これは困ったことにリムブレーキ(キャリパーブレーキ)が絶対につけられないという二重苦に直面しています。溶接屋の田中さんのところに持っていって、リムブレーキがつくようにブラケットを溶接してもらうとか、そういうのは今回は考えない。
リムブレーキがつけられないので、スターメーアーチャーの5速SRF5は却下。リアブレーキなしという選択は、さすがの私でもありません。コンプライアンスの問題だけではなく、命が惜しいということです。
選択としては、内装3段ギアでドラムブレーキもしくはコースターブレーキがついているものでエンド幅が120mm以下のもの。こうなるとスターメーアーチャーのSAB3かSAC3しか選択がないです。
シマノの内装3段コースターブレーキ付きハブ、エンド幅120mmというものがあってそれが付きそうではあるんだけど、変な自転車にシマノは決定的に似合わない。やっぱりここはスタメのお世話になりましょうか、、、となるなぁ。

本当はケーブルを1本減らせるコースターブレーキつきのSAC3が欲しかったのですが、中華サイトで安く売っていなかったのでドラムブレーキ付きのSAB3という選択になりました。高い金(というか定価)を払えばSAC3も手に入りますができれば安く上げたいのです。でも結局ケーブル3本ジャラジャラさせている少々スッキリしないものになったわけです。



ただのブレーキ付き内装ギアハブなのに、なぜなのかものすごくカッコいい雰囲気を漂わせているスターメーアーチャーSAB3。1902年創業(?)以来120年の歴史を持つ風格なのかもしれません。オーバーロックナット寸法は実測118mmです。ホイールを外した時に計ったリアフレームのエンド幅は114mm。片側2mmずつ広げるぐらいなら何とかなりそうな気がします。ダメなら1mmずつぐらい左右のナットを削るということも考えておきます。
そして、スターメーアーチャーといえば毎度お馴染みとなっている、13/32 26tpiというどこのネジ屋にも置いてない不思議な規格のアクスルナットです。これも御多分に漏れずです。


入手したギアハブが36穴というものなので、これまた14インチで36個ものスポーク穴が付いているというレアなリムを何とか探してきました。14インチ36hなんてリム、こんなの本来は一体何に使うものなのだろう?荷車用の車輪なのかな?とか実際はシレーっと28穴を送ってくるのではないか?と思いながらも、ちゃんと36穴の物を送ってくる(しかも2000円もしないという)中華サイトには敬服いたします。私が心の何処かで何となく中国人に一目置いている理由がここにあります。日本だとどこ探してもこんなもの無かったよ。
しかしながら汁物を入れるお椀がニップルをジャラっと入れて油かけたうえで、1個摘んで取り出しやすい、というのは自分ながらやってみて驚いた(笑)。


スポーク長計算サイトではじき出してくれた数値よりも1mm短くしてスポークは100mmと98mm。こんな短いスポークというのもなかなか見る機会はないと思います。14番スポークの強度など絶対に必要ないと思いますので、それよりも細い15番で組みます。どう考えても2本組で必要充分な強度が出るだろう?と思いますが、4本組(2 cross)で組みます。


36本は多いです。なかなか組み終わりません。簡単な2本組でやっておけばよかったとちょっと後悔します。スポークが短いのでアヤを取るのにかなり力を入れて曲げないと組めません。14番スポークでやっていたら曲げきれなかったかもしれないです。と言うか、そもそもこれにアヤなんか無理に取らなくてもいいのではないだろうか?こんなミニホイールに横剛性も何もあったものではないだろう?などと疑問を持ちながら延々と単調なホイール組み作業を続けます。
軸ブレーキなのでセオリー通りJIS組でやりました。


もともと重い内装ギアにドラムブレーキまでがついているとは言え、リアホイールだけで1700グラムという威風堂々たる重量。せっかくの軽い自転車がこれで台無しになる気がしますが、今更後戻りはできません。


スポークが短いのであまり振れが出ません。スポークテンションを大してかけなくてももうカチカチ、剛性感満開の状態です。
半分間引いて18本で組んだら?と思ったけど、片側9本という奇数ではラジアル組以外は組めないか、、、


フレームと同じ色のサドルにしたいのですが、黄色い革がないので薄めの色でサドルに革を巻きます。


ドラムブレーキをフレームに固定するクランプというかブラケットを探すのが面倒なので、アルミ板を曲げて間に合わせます。ケーブルガイドやブレーキケーブルのエンドもPETG素材を3Dプリントして作りました。
14インチ用のチューブについているバルブがどうしてこんなに長いのか?これは理解に苦しみます。バルブ部分でスポークがクロスしないように組んでありますが、空気を入れるのには苦労します。
ドラムブレーキ側についている一番かっこいいスターメーアーチャーのロゴがフレームに隠れてしまうのが非常に残念ですが、レーザー刻印したロゴをフレームに貼り付けておきます。

ただ、こんな小さなホイールに36本というスポーク数が絡み合うとなかなか壮観ではあります。車体よりもリアホイールのほうが長持ちしそうな気がします。
70mmドラムブレーキですが、何と言っても14インチという小さいホイールなのでアホみたいにブレーキが効き、簡単にロックしてしまいます。


ケーブルガイドもタイラップで止めればそれで十分役に立つんだけど、外観があまりスマートではないのです。フレーム形状に合わせて専用部品を作っているというのがちょっとかっこいいですね。


ブレーキケーブルのエンドもそれほど力がかかる部分でもないので、3Dプリントでも充分だと思います。


スターメーアーチャーのドラムブレーキはケーブルエンドの方にもタイコがついているもので、すごーく長いケーブルアジャスターを使って長さを調整するもののようですが、ここはひと工夫してM5のボルトにシフトケーブルが通る穴をあけてボルト締めでケーブルが固定できるようにしました。


ブレーキのアームの位置をずらして結局こうした。Sturmey Archerの側面ロゴが見えないと存在の意味がない。自分以外は誰も気にしないんだけどさ。俺は普通の人間が使うシマノじゃなくてスタメだぞ?という主張
女の子向けの可愛らしい自転車に「男らしい」スターメーアーチャーというミスマッチが何とも良いです。


もともとシングルギアのため、シフトケーブルがない構造なので右側にケーブルガイドとケーブルエンドを3Dプリンターで部品を作ってケーブルを取り回します。フレームのRに沿ってピシッとケーブルが取り付いているのはなかなか美しいです。


シフトケーブルのエンドを付ける場所には何の目的なのかわかりませんが、M5のネジが切ってあるダボ穴がついたブラケットがフレームに溶接してあり、ちょうど良い場所にあるのでこのブラケットに合わせて3Dモデリング。


こういうやり方はちょっと問題がある気がするのですが、内装3段ギアを付けたらコグの位置が違ってくるので、チェーンラインが外側に多少寄りました。ボトムブラケットを広いものにしたらチェーンラインは合いましたが、今度はフレームにチェーンが摺るのです。
5mmのダボ穴がついたフレームのブラケット部分に、ジャンクの外装ディレーラーからガイドプーリーを取り外してきて、それがまたちょうどM5のボルトで取り付けできるので、ここにチェーンガイドを付けてみました。


横から見るとチェーンが途中で折れてフレームとのクリアランスが稼げるわけですが、チェーンの力がかかる側をこうすることは、やっている本人もこれは如何なものなのかな?と思います。チェーンテンショナーは普通チェーンの下側(力がかからない側)についているものです。あれは意味があるのだと思います。
ペダルを踏むとガイドプーリーにチェーンがいつも力がかかった状態で当たるので、やかましいのは確かです。その分駆動ロスもあると思います。厚歯とはいえチェーンの寿命がやたら短い可能性もあります。ガイドプーリーの減りが早いことだけは確かでしょう。
ただ現状とりあえずこの方法しかありません。改造車というのは本来そういう設計になっていないものなので、どこか無理があるものなのです。言わば「苦肉の策」というやつです。


車体が小さいから当たり前なのですが、とにかくフレームが短くサドルを目一杯後ろに下げてもハンドルとの位置が近すぎて乗りにくいことこの上ないです。ハンドル延長ブラケットを付けて70mmほどハンドル位置を遠くしたら、かなりマシになりました。
シフターは最安と思われるフリクションレバーを使います。フリクションシフターは内装ギアでも便利です。面倒なインデックス調整が必要ありません。ただ内装ギアの場合、間違った位置だと踏み抜けが起こります。慣れればそれもなくなりますが、内装でフリクションシフターという例を見たことがないのはそういう理由なのかもしれません。


もうグリップなど金をだして買うのも馬鹿馬鹿しいので、これもTPUというシリコンのフィラメントで3Dプリントします。フィラメント代金は2個で200円ぐらいでしょうか。
柔らかい素材なのですが、プリントしたら期待する程は柔らかくなかったです。まっすぐではなくウエーブがついているところがモデリングのこだわりどころです。


シリコン素材は接着剤が効かないという問題があるのですが、内側に溝を付けて接着剤がその溝に入り込み、グリップがくるくる回らずハンドルバーに固定されるという工夫がしてあります。実際、カッチリ固定されます。接着剤はSuper Xです。


ブロンプトンとかDahon・Ternについているフロントキャリアブロックを取り付ける便利なブラケットはこの自転車にはついていません。あれは本当に便利なので、シリコン素材を3Dプリントしてフロントキャリアブロックを取り付けます。


フレーム形状の都合で片持ちになりますが、通常上から下への荷重しか考えなくてもいいので、これでとりあえず問題は出ておりません。


これまたちょっと便利なレジ袋ぶら下げフックをハンドルポストに取り付けます。


大きなバッグをフロントキャリアに付けたときにもバッグの柄をここに引っ掛けると安定します。驚くべき便利さ。メーカーがこれを考えつかないのが逆に不思議なぐらいです。考えついたとしても安全上の問題で採用されていないのかもしれません。おそらくそれが理由でしょう。10kg,20kgという滅茶な重さのものを引っ掛けて事故を起こすユーザーは必ず出てくるものです。


20インチと並べると、14インチは本当に小さいです。というか20インチは小径とは言えない、そんな気がします。


チェーンリングが38T、リアのコグが13Tの14インチなので、頑張って漕いでも30kmが限界ですが、ガイドプーリーで無理やりチェーンの縦ラインを曲げているので、48Tぐらいまでフレームに干渉しない気がします。ただこの自転車でスピードを出すのは非常に危険なので、無理してスピードを出す必要は全くないとは思います。むしろ命が惜しければスピード出すな、ということで。

プロが見たら発狂してしまうほどのメチャメチャな改造車ですが、まあブレーキだけは前後ガッチリ効くのが救いです。ということでおしまい。